喉が痛いときの対応は?看護師が知っておきたい原因と受診の目安
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喉が痛い原因の多くは自然に軽快し、平均的な経過は約7日とされます[4]。抗菌薬が必要かは、スコアで細菌性の可能性を見積もって考えます[1][4]。看護師は経過と危険サインの見極めが要です。
「喉が痛い」は、外来でも病棟でも電話相談でも、とてもよく聞く訴えです。結論からお伝えすると、喉が痛い症状の多くは自然に軽快し、抗菌薬が不要なケースも少なくありません。大切なのは、細菌感染の可能性をスコアなどで整理することと、危険なサインを見逃さないことです。
この記事では、看護師さんが押さえておきたい考え方を、海外のガイドラインやレビューをもとにやさしく整理します。
喉が痛いとき、まず何を押さえればいい?
ポイントは次の3つです。
- 急性の喉の痛みは、重い基礎疾患などがなければ多くが自然に治る[4]
- 平均的な経過は約7日とされている[4]
- 検査や抗菌薬は「全員に」ではなく、リスクに応じて考える[1][4]
ドイツの診療ガイドラインでは、免疫抑制状態、重い併存疾患、重い全身感染症などの「レッドフラッグ」がなければ、急性の喉の痛みはおおむね自己限定的とされています[4]。
つまり看護師の役割は、「治療を足すこと」だけではありません。「この人はレッドフラッグに当てはまらないか」「経過は想定内か」を確認し、安心して過ごせるよう支えることも大切です。
最初に確認したい情報
トリアージや問診では、次のような点を整理しておくと、医師への報告がスムーズになります。
- いつから痛いか(経過の日数)
- 発熱の有無と程度
- 咳があるかどうか
- 飲み込みの痛み、食事や水分がとれているか
- 基礎疾患や免疫を抑える治療の有無
- すでに服用した薬
※施設ごとのトリアージ基準や医師の指示がある場合は、そちらを優先してください。
喉が痛い原因は?ウイルスだけでなく細菌も関係する?
急性の喉の痛みの背景には、さまざまな病原体が関わります。なかでも、抗菌薬の判断で話題になるのがA群溶血性レンサ球菌(GAS、いわゆる溶連菌)です。
メタアナリシスでは、プライマリケアで喉が痛い人のうち、GASは咽頭にみつかったときに症状との関連が強いと示されています[7]。
一方で、次の菌も注目されています。
- Fusobacterium necrophorum:急性咽頭痛との関連はありうるものの、GASに比べると関連は弱い[7]
- C群レンサ球菌:外来の咽頭痛患者でよく検出されますが、本当に病原性があるのか、抗菌薬で経過が変わるのかは、今後の研究が必要とされています[8]
つまり「菌が検出された=その菌が原因」と単純には言い切れない場面もあります。検査結果は、症状や診察所見とあわせて医師が総合的に判断するものだと理解しておくとよいでしょう。
慢性的な喉の痛みは別の視点で
長く続く喉の痛みは、感染以外の原因が多いとされています[4]。「風邪が長引いているだけ」と決めつけず、持続している場合は受診につなげる視点も持っておきたいですね。
溶連菌かどうかは、どう見分ける?スコアの考え方
医師の経験だけで溶連菌を診断するのは、あまり信頼できないとされています。かといって、喉が痛い人全員に検査をすると、費用や負担がかさみます[1]。
そこで使われるのが、臨床スコアリングです。
IDSAガイドラインのスコアの考え方
米国感染症学会(IDSA)の2025年更新版では、スコアで使う標準的な項目として、次の例が挙げられています[1]。
- 発熱
- 扁桃の腫大または滲出物
- 前頸部リンパ節の腫れと圧痛
- 咳がないこと
小規模な研究が多いなどの限界はあるものの、スコアの診断精度は医師の判断のみと同等か、やや高いとされています[1][5]。パネルの合意として、喉が痛い患者さんの評価にスコアを取り入れる利点が大きいと結論づけられました[1][5]。
特に有用なのは、「GAS咽頭炎の可能性が低い人」をみつけて、不要な検査を減らすことです[1]。
ドイツのガイドラインのスコア
ドイツのガイドラインでは、次の5項目に1点ずつを付けます[4]。
- 扁桃の病変
- 触れる頸部リンパ節
- 年齢
- 経過
- 発熱
合計点による考え方は次のとおりです[4]。
- 3点未満:リスクが低く、抗菌薬は適応にならない
- 3点:遅延処方(様子をみてから使う方法)が勧められる
- 3点を超える:すぐに抗菌薬を服用してもよい
国や地域によって、スコアの項目や運用は異なります。実際の現場では、自施設や国内の指針、医師の判断に沿って運用してください。スコアは医師の診断を代わりに行うものではなく、判断を助けるための道具です。
喉が痛いときに抗菌薬は必要?どの薬が使われる?
抗菌薬の効果は、喉の痛みに対してはあまり大きくないとされています。溶連菌の検査が陽性の人では効果が高まるものの、それでも限定的です[6]。
ドイツのガイドラインでも、レッドフラッグを除外したうえで、多くの急性咽頭痛で抗菌薬は不要と結論づけています[4]。使う場合も、経過や合併症リスクの低さを説明したうえで、スコアを使ったリスク別の対応が推奨されています[4]。
使うとしたらペニシリンが基本
- ペニシリンが第一選択とされ、不耐症の場合の代替としてクラリスロマイシンが挙げられています[4]
- 服用期間は5〜7日とされています[4]
コクランレビューでは、セファロスポリン系やマクロライド系がペニシリンより臨床的に優れるかは不確実で、抗菌薬を使うならペニシリンを使えると結論づけています[6]。
抗菌薬の適正使用で看護師ができること
- 「喉が痛い=抗菌薬」という期待があるときは、自然経過を説明する
- 処方された場合は、指示どおり飲み切ることを確認する
- 副作用や飲みにくさがないか、確認する
なお、ニュージーランドでは急性リウマチ熱が問題になる地域があり、ガイドラインが国によって異なる点が指摘されています[3]。海外の推奨をそのまま日本に当てはめず、国内の指針も確認しましょう。
痛みを和らげるケアや薬は?
セルフケアと鎮痛薬
ドイツのガイドラインでは、薬を使わないセルフマネジメントのほか、症状緩和にはイブプロフェンとナプロキセンが推奨されています[4]。
日常のケアとしては、次のような声かけが考えられます(ここに実体験を追記)。
- 水分をこまめにとれているか確認する
- 刺激の少ない食事を提案する
- 休養をとるよう伝える
鎮痛薬は、患者さんの持病や腎機能、他の内服薬との兼ね合いで使えない場合があります。必ず医師・薬剤師の指示に従いましょう。
ステロイドはどう位置づけられる?
コクランレビューでは、経口または筋注のステロイドを、抗菌薬や鎮痛薬に加えて使うと、痛みの完全消失が24時間時点で2.4倍、48時間時点で1.5倍になったと報告されています[2]。24時間時点で痛みが続く人を1人減らすのに、5人の治療が必要という結果でした[2]。
ただし、著者らも効果は限定的で、短期間のステロイドの利益と害については、さらなる研究が必要としています[2]。有害事象の報告の質も十分ではなく、小児への適用には不確実性が残ります[2]。看護師が判断するものではなく、医師が総合的に検討する選択肢のひとつ、と理解しておくとよいでしょう。
患者さんへの声かけと、受診を勧める目安は?
伝えたいポイント
- 多くは数日から1週間ほどで落ち着くことが多い[4]
- 症状が重くなったり、経過が長引いたりしたら、早めに相談する
- 抗菌薬は、必要かどうかを医師が判断する
早めの受診・報告を考えたいサイン
ガイドラインでは、免疫抑制、重い併存疾患、重い全身感染症などがレッドフラッグとして挙げられています[4]。ほかにも、次のような場合は医師への報告や受診を検討します。
- 水分がとれないほど痛みが強い
- 呼吸が苦しい、声が出しにくいなどの変化がある
- 高熱が続く、全身状態が悪化している
- 免疫を抑える治療中や重い基礎疾患がある
これらは施設の基準や医師の指示にあわせて運用してください。
まとめ
- 喉が痛い症状の多くは、レッドフラッグがなければ自然に軽快する[4]
- スコアは、細菌性の可能性が低い人を見極め、不要な検査を減らすのに役立つ[1]
- 抗菌薬は限定的な効果で、使うならペニシリンが基本[4][6]
- 症状緩和にはイブプロフェンやナプロキセンが推奨されている[4]
- 危険なサインがないか、経過と全身状態を確認する
「喉が痛いだけ」と軽く見ず、でも過剰な治療にも傾かないバランスが大切です。不安なときは、一人で抱えずに医師や薬剤師に相談しましょう。
参考文献
- 2025 Clinical Practice Guideline Update by the Infectious Diseases Society of America on Group A Streptococcal Pharyngitis: Risk Assessment Using Clinical Scoring Systems in Children and Adults. Clinical infectious diseases : an official publication of the Infectious Diseases Society of America. 2026.(診療ガイドライン)PubMed / DOI
- Corticosteroids as standalone or add-on treatment for sore throat. The Cochrane database of systematic reviews. 2020.(メタアナリシス)PubMed / DOI
- International sore throat guidelines and international medical graduates: a mixed methods systematic review. Journal of primary health care. 2016.(システマティックレビュー)PubMed / DOI
- Clinical Practice Guideline: Sore Throat. Deutsches Arzteblatt international. 2021.(診療ガイドライン)PubMed / DOI
- Overview of 2025 Clinical Practice Guideline Update by the Infectious Diseases Society of America on Group A Streptococcal (GAS) Pharyngitis: Risk Assessment Using Clinical Scoring Systems in Children and Adults. Clinical infectious diseases : an official publication of the Infectious Diseases Society of America. 2026.(システマティックレビュー)PubMed / DOI
- Different antibiotic treatments for group A streptococcal pharyngitis. The Cochrane database of systematic reviews. 2023.(システマティックレビュー)PubMed / DOI
- Acute sore throat and Fusobacterium necrophorum in primary healthcare: a systematic review and meta-analysis. BMJ open. 2021.(メタアナリシス)PubMed / DOI
- Prevalence of Group C Streptococcus and Fusobacterium Necrophorum in Patients With Sore Throat: A Meta-Analysis. Annals of family medicine. 2016.(メタアナリシス)PubMed / DOI
文献はPubMed(米国国立医学図書館)から、診療ガイドライン・メタアナリシス・システマティックレビューに限って選んでいます。
よくある質問
喉が痛いとき、抗菌薬は必ず必要ですか?
いいえ、必ずしも必要ではありません。レッドフラッグがなければ急性の喉の痛みは自然に軽快しやすく、多くの場合で抗菌薬は不要とされています[4]。必要かどうかは、症状やスコアをふまえて医師が判断します。
溶連菌かどうかはスコアだけで分かりますか?
スコアだけで確定はできません。スコアは細菌性の可能性を見積もり、特に可能性が低い人を見分けて不要な検査を減らすのに役立つ道具です[1]。検査の要否は医師が判断します。
喉が痛いとき、どの鎮痛薬が推奨されていますか?
ドイツのガイドラインでは、セルフケアに加えて、イブプロフェンとナプロキセンが症状緩和に推奨されています[4]。ただし患者さんごとに使えるかは異なるため、医師や薬剤師の指示に従ってください。
喉の痛みは通常どのくらいで治りますか?
ドイツのガイドラインでは、急性の喉の痛みの平均的な持続期間は約7日とされています[4]。ただし個人差があり、悪化や長引く場合、基礎疾患がある場合は早めの相談が大切です。
