GABAとは?看護師が押さえたい基礎知識とセフェピム脳症のポイント

公開日  更新日

結論

GABAは神経の働きに関わる物質で、うつ病の遺伝研究でも注目されています[2]。臨床では、セフェピムのGABA拮抗作用による神経毒性(意識障害やミオクローヌスなど)に注意が必要です[1]。

GABA(ギャバ、γ-アミノ酪酸)は、脳の神経細胞どうしの情報のやりとりに関わる物質です。サプリやチョコレートで名前を見かけることも多いですが、臨床の現場でも、薬の副作用やうつ病の研究の中で登場します。

この記事では、看護師の方に知っておいてほしいGABAの基礎と、とくに病棟で役立つ「セフェピムによる神経毒性」のポイントをやさしく解説します。なお、根拠として使うのは下記の文献に書かれている内容だけです。書かれていないことは、断定せずに「ここでは扱わない」としています。

GABAとは?まず押さえたい基本

GABAは、神経の間で情報を伝える「神経伝達物質」のひとつです。神経細胞の表面には、GABAを受け取る「GABA受容体」があります。

この受容体は、いくつかの薬の標的になることがあります。実際、うつ病の大規模な遺伝研究では、GABA受容体をコードする遺伝子が、抗うつ薬の標的として報告されています[2]。

ここでは、細かい仕組みを覚える必要はありません。まずは次のイメージで十分です。

  • GABAは脳の中で働く物質のひとつ
  • GABAを受け取る受容体があり、薬の作用点になることがある
  • GABAの働きが薬で妨げられると、神経症状が出ることがある[1]

GABAとうつ病は関係があるの?

結論から言うと、「関係を示唆する遺伝学的な研究結果がある」という段階です。

2023年に発表されたゲノムワイド関連解析のメタアナリシスでは、130万人以上(うつ病の人は371,184人)のデータを解析し、243のリスク領域が見つかりました。そのうち64は新しく見つかったもので、グルタミン酸受容体やGABA受容体をコードする遺伝子も含まれていました[2]。

また、胎児期のGABA作動性ニューロンなどで、関連する遺伝子の発現が多いこともわかっています[2]。

読むときの注意点

ここで大切なのは、次の点です。

  • これは「遺伝子レベルの関連」を調べた研究です
  • 「GABAを摂ればうつ病が良くなる」ことを示したものではありません
  • 患者さんへの説明では、「うつ病にはさまざまな要因が関わる」と伝えるのが安心です

うつ病は多くの遺伝的要因が少しずつ関わる「ポリジェニック」な病気だと報告されています[2]。GABAだけで説明できるものではない、という点も覚えておきましょう。

GABAと薬の副作用|セフェピム脳症とは?

看護師さんにいちばん身近なのが、こちらのテーマではないでしょうか。

セフェピムは広く使われている抗菌薬です。血液脳関門を通過し、濃度依存的にGABAに拮抗する作用があることから、神経毒性が起こりうると考えられています[1]。

ICUの患者さんでは、セフェピムを使った人のうち最大15%でこうした副作用が起こりうるというデータもあります[1]。

どんな症状が出るの?

報告されている神経毒性の症状は次のとおりです[1]。

  • 意識レベルの低下
  • 脳症(せん妄のような状態を含む)
  • 失語
  • ミオクローヌス(不随意な筋のぴくつき)
  • けいれん
  • 昏睡

135例を集めたシステマティックレビューでは、全例で意識や精神状態の変化がありました。多かった症状は、意識の低下(47%)、ミオクローヌス(42%)、錯乱(42%)です[1]。

脳波を調べた98例では、全例で異常が見られました。非けいれん性てんかん重積が25%、三相波が40%でした[1]。

どんな人でリスクが高い?

報告されているリスク因子は次のとおりです[1]。

  • 腎機能障害
  • 過量投与
  • もともとの脳の障害
  • 血中のセフェピム濃度が高いこと

レビューの症例では、80%に腎機能障害があり、81%がICUでの治療を受けていました。年齢の中央値は69歳でした[1]。

また、添付文書にあたるFDAの用量の目安で見ると、48%が過量投与でした。一方で、適切な用量でも26%に神経毒性が起きていました[1]。「用量が合っていれば大丈夫」とは言い切れない点に注意が必要です。

経過と対応はどうなる?

症状が出るまでの期間は、投与開始から中央値で4日でした[1]。

対応としては、セフェピムの中止、抗てんかん薬の投与、血液透析などが行われていました。介入のあと、症状が消えるまでは中央値で2日でした[1]。

結果として、89%で症状が改善し、87%が退院まで生存していました[1]。通常は薬を止めると改善することが多いものの、追加の治療が必要になる場合もあります[1]。

病棟で気づくには?観察と連携のコツ

セフェピム神経毒性は、「気づきにくい」ことが課題とされています。ICUの患者さんには、もともと意識障害やせん妄など、似た症状が多いからです[1]。

ここでは、一般的な観察の視点を整理します。個々の患者さんの判断は、必ず医師・薬剤師と相談してください。

日々の観察で意識したいこと

  • いつもと比べた意識レベルや反応の変化
  • 手足や顔の不随意なぴくつき(ミオクローヌス)
  • 言葉が出にくい、つじつまが合わないなどの変化
  • けいれんのような動きの有無
  • 抗菌薬の開始時期と症状が出た時期の関係

症状の出現が投与開始から数日後になることもあるため[1]、「始めてすぐではないから関係ない」と決めつけないことが大切です。

連携のときに伝えたいこと

医師や薬剤師に報告するときは、次の情報をそろえると伝わりやすくなります。

  • いつから、どんな変化があったか
  • 使用中の薬と、開始日
  • 腎機能に関する検査データ
  • 持病(脳の障害の既往など)

腎機能障害や過量投与はリスク因子として報告されています[1]。そのため、腎機能と投与量の情報を共有することは、チームで気づく助けになります。

(ここに、病棟で実際に工夫していることや、現場での気づきを追記)

GABAのサプリや食品の効果は?

「GABAを含む食品やサプリで、ストレスや睡眠が良くなるの?」という質問を受けることがあるかもしれません。

今回参照している文献は、遺伝研究と薬の副作用に関するものです。そのため、食品やサプリの効果についてはここでは述べることができません[1][2]。

患者さんから聞かれたときは、次のように対応すると安心です。

  • 効果の有無を断定せず、「確かな根拠は別に確認が必要です」と伝える
  • 服用中の薬やサプリは、医師・薬剤師にも伝えてもらう
  • 睡眠や気分の悩みが続くときは、主治医に相談してもらう

まとめ:GABAは「薬の副作用」を考える手がかりにもなる

GABAについて、今回の文献からわかることをまとめます。

  • GABA受容体の遺伝子は、うつ病の遺伝研究で関連が報告されている[2]
  • セフェピムはGABA拮抗作用により、意識障害やミオクローヌス、けいれんなどを起こすことがある[1]
  • 腎機能障害や過量投与がリスクだが、適切な用量でも起こりうる[1]
  • 多くは薬の中止で改善するが、抗てんかん薬や透析が必要なこともある[1]

「いつもと違う」と感じる直感は、現場の看護師さんならではの大切な視点です。気になる変化があれば、ひとりで抱え込まず、チームで共有していきましょう。

参考文献

  1. Cefepime-induced neurotoxicity: a systematic review. Critical care (London, England). 2017.(システマティックレビュー)PubMed / DOI
  2. Depression pathophysiology, risk prediction of recurrence and comorbid psychiatric disorders using genome-wide analyses. Nature medicine. 2023.(メタアナリシス)PubMed / DOI

文献はPubMed(米国国立医学図書館)から、診療ガイドライン・メタアナリシス・システマティックレビューに限って選んでいます。

よくある質問

GABAとは何ですか?

GABA(γ-アミノ酪酸)は、脳の神経細胞の情報伝達に関わる物質です。GABAを受け取る受容体があり、薬の作用点になることもあります[2]。

セフェピムでなぜ神経症状が出るのですか?

セフェピムは血液脳関門を通過し、濃度依存的にGABAに拮抗する作用があるため、神経毒性が起こりうると考えられています[1]。意識障害、ミオクローヌス、けいれんなどが報告されています[1]。

セフェピム神経毒性は用量を守っていれば起こりませんか?

いいえ、起こりうるとされています。レビューでは、適切な用量でも26%で神経毒性が起きていました[1]。腎機能障害などのリスク因子にも注意が必要です[1]。

GABAはうつ病と関係がありますか?

うつ病の大規模な遺伝研究で、GABA受容体をコードする遺伝子が関連領域に含まれていました[2]。ただし遺伝的な関連の報告であり、GABAの摂取で改善するという意味ではありません。